『ソマティック心理学』の久保隆司先生による新著『生成と統合の神学ー日本・山崎闇斎・世界思想』(春秋社)が今年2月に発刊されて、4ヶ月が経ちました。
6/26(月)の 18:30〜20:30 ごろまで、阿佐ヶ谷にてこの本の読書会を行います。
この記事では、読書会に当たって、本を読まれた人も、まだ読まれていない人にもヒントになる、本の紹介をしたいと思います。
山崎闇斎とは?
山崎闇斎(1619-1682)は、江戸時代前期に生きた思想家・宗教家です。
闇斎は、武士であり後に鍼医者になった父・浄因と母・舎奈の間に生まれました。幼少期より比叡山や妙心寺に入り、仏教の修行に明け暮れる青春期でしたが、高僧の湘南宗化によって才能を見出され、19歳の時に土佐に移ります。 そして、土佐の地で朱子学(南学)と衝撃的な出会いをし、次第に仏教から儒教へと「転向」。
仏教の教えが抽象的な「空」の概念の探求を対象としていたことに疑問を持ち、情や社会性を排除していると考えたのが理由でした。
38歳になると、京都で家塾を開いて朱子学を教え始め、多くの門徒が集うようになります。そして同時に、闇斎自身が神道への関心も抱くようになります。
また、41歳から56歳までは毎年江戸に赴き、三代将軍家光の異母兄弟であり、四代将軍家綱の後継人である会津藩主の保科正之に朱子学や神道に基づく助言を行います。
さらに52歳から54歳にかけては、伊勢神道と吉田神道という二大神道から秘伝を伝授されます。闇斎は、両者の秘伝に通じた唯一の日本人になりました。
63歳の生涯の中で、闇斎は朱子学(崎門学派)と神道(垂加神道)を両輪に、心身統合の道の 実践的探求と理論の構築と統合に関わる、さまざまな偉業を達成しました。
実社会においても、江戸幕府や京都の朝廷に大きな影響を与えています。
たとえば、私たちが知る「大和魂」という言葉は闇斎思想の流れから生まれたものと言われ、後の尊王攘夷運動や日本人の精神にも影響を及ぼしました。明治維新、そして GHQによる日本占領期の二つの「断絶」により表面的には見えなくなっていますが、闇斎が遺した思想は、現代の私たちの心身を構成する文化のさまざまな根底に今も息づいているのです。
山崎闇斎とソマティック(心身)の関係とは?
山崎闇斎は、近世の日本において初めて、本格的な心身統合の理論「心身論」を打ち立てた思想家・実践家と評価できます。 闇斎は、「身体の中に神が宿る(心神)」として、朱子学と神道の二つの軸をもとに、日常の生活の中で自分を整える方法を体系づけました。
闇斎が築いたその手法は、朱子学による居敬(読書や仕事などに励む)・静坐(瞑想的な修養)の実践と、神道による祈祷・正直の実践であり、「理論」と「感性」、「合理的なもの(ロゴス)」と「非合理的なもの(レンマ)」という異なる性質のものを統合する試みでした。
現代のソマティック心理学でいうならば、理論と感性は、「解剖学」と実践で感じる「身体感覚」であり、その両輪と相互作用性があってこそ、より着実な成長へとつながりやすくなるとも言えるでしょう。
古今東西の思想家・宗教家・実践家を適時参照しながら、闇斎の「風土論」・「心身論」・「超越 論」に触れることで、日本での古代から中世、そして近世近代へと至るボディ/マインド/スピリットの統合の道を体感/体認するかもしれません。
本の読みどころ
どのように本を楽しんで読むかは人それぞれですが、キーワードをごく一部、お伝えしたいと思います。
風土(環境)と人間
山崎闇斎は京都で生まれ、比叡山の文化(山王ミーム)に影響を受けています。闇斎と比叡山との 関係を知ることで、私たちが風土に影響を受けて、生きていることを感じることができるかもしれません。
共時性/夢
様々な偉業を成し遂げた闇斎ですが、その偉業はさまざまな偶然の重なりによって成し遂げられまし た。ユング心理学の「共時性」から、闇斎の人生を振り返っています。
心身の発達と葛藤の克服
心身の統合は、心身の発達のプロセスによって起こります。エリクソンの発達心理の観点から、闇斎の 人生とその葛藤を読み解き、闇斎自身がどのように心身統合の道を果たそうとしたのかを分析しています。
陰陽五行論の応用
東洋医学・中医学の基礎になる「陰陽五行論」。道教、儒教などを問わず、古典の東洋哲学にお いて重要とされる概念です。陰陽五行論を基に、生成と統合のプロセスを探ります。
静坐
闇斎は、心身を整える修養法として「静坐」を重視しました。静坐の技法は現在では途絶えており、 どのような方法であったかを身を持って知ることはできません。この本では、文献を基に静坐について解説。瞑想などの実践者には何かヒントがあるかもしれません。
その他読みどころ
上昇と下降/天人唯一/オルダス・ハクスリー/デカルト/超越論...などなど、数えきれないほどあります!
全てを読むには数ヶ月はかかりそうなほどボリュームがありますが、ご興味のある方は、気になるところから読んでみてください。現在の自分と、闇斎との間に何か繋がりを見つけられるかもしれません。
6月26日(月)の読書会は、18:30 より行います(2 時間程度)。
場所:阿佐ヶ谷地域区民センター 第一和室
〒166-0001 杉並区阿佐谷北1丁目1番1号(JR阿佐ヶ谷駅より徒歩5分)
参加費:2000 円(当日現金にて。お釣りのないようお願いいたします))
内容:読者間のシェアリング、著者との Q&A など
参加条件:本書をお持ちで、序文に目を通していること。(当日の書籍販売はないので、事前にお求めください)
申し込み不要。参加希望の方は、当日直接現地に起こしください。
皆さまのご参加をお待ちしております。